椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症は痛みの原因ではない?
~ 真の痛みは深部痛と筋緊張にあり 〜
はじめに
多くの方は、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」と診断されると、「これが痛みの原因だ」と考えがちです。しかし、近年の研究では、これらの異常が必ずしも痛みと直接結びついているわけではないことが示唆されています。
そこで今回は、基礎医学の観点から「深部痛」—筋肉・腱・靱帯などから生じる痛み—に焦点を当て、筋の硬直(筋緊張)がなぜ痛みの根本的な原因となるのかを解説します。

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椎間板ヘルニアの実態
ある研究(PubMed: 8747239)によると、MRI検査を受けた腰痛のない被験者の76%に椎間板ヘルニアが確認され、さらに85%には椎間板の変性が見られたと報告されています。これは、腰痛のない人でも同様の構造的変化が起こることを示しており、椎間板ヘルニアが痛みの直接的な原因とは限らないという根拠となります。

脊柱管狭窄症の真実
さらに、複数の研究によると、脊柱管狭窄症の要因とされる変形性関節症(DJD)は、70歳以上のすべての人に認められると報告されています。これは、加齢に伴う自然な変化であり、必ずしも痛みの直接的な原因とは限らないことを示しています。

From Bigos S, Muller G, Primary care approach to acute and chronic back problems: Definitions and care. In: Loeser JD, ed. Bonica’s Management of Pain, 3rd ed. Philadelphia; Lippincott Williams and Wilkins, 2001.
真の痛み―深部痛の視点
これらの研究結果から、画像診断で確認される椎間板や脊柱管の変化は、痛みの「原因」そのものではなく、加齢や個人差による「所見」の一つに過ぎない可能性があることが示唆されます。実際の痛みの多くは、筋肉・腱・靱帯といった**深部組織から発生する「深部痛」**であると、生理学的観点からも考えられています。

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筋の痛みと筋緊張の関係
深部痛の多くは、筋肉の硬直や過度な緊張、つまり「筋緊張」が主な要因とされています。日常生活での習慣やストレス、不良姿勢などが影響し、筋肉が適切な状態を保てなくなると、緊張が蓄積し、それが痛みとして現れるのです。したがって、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった構造的な問題ではなく、筋肉の状態に着目することで、痛みの根本原因を探ることができると考えられます。
緩消法―痛み改善への新たなアプローチ
「緩消法」は、筋肉の硬直を根本から和らげる画期的なアプローチです。この手法では、筋を傷つけることなく「限りなく無緊張状態」に導き、過度な筋緊張を解消することで深部痛の軽減につながるとされています。以下の点で注目を集めています。
- 安全性と非侵襲性
身体に負担をかけず、筋肉のバランスを優しく整えることで、痛みの原因となる筋緊張を和らげる。
- 再現性と実践のしやすさ
医療現場はもちろん、日常生活にも取り入れやすい手法であり、多くの症例で効果が確認されている。
- 根本治療への期待
一時的な痛みの緩和ではなく、筋肉の状態そのものを改善し、慢性的な痛みの根本解決を目指す。
結びに
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症は、画像検査で確認されるものの、痛みの直接的な原因とは限らないという研究報告が増えています。実際の痛みは、深部組織から発生することが多く、その主な要因は筋肉の硬直にあると考えられています。
このような背景から、**筋緊張を根本から改善する「緩消法」**が、新たな痛み治療の有効な手法として注目されています。
私たちは、痛みの本質を正しく理解し、根本的な解決を目指す新たなアプローチに注目し続けることが重要です。最新の研究成果と臨床実践が融合することで、多くの人々が痛みから解放され、より快適な生活を取り戻せる未来を目指しましょう。
【参考文献】
・PubMed: 8747239
・Bigos S, Muller G, et al. in Bonica’s Management of Pain, 3rd ed. (2001)
・その他、関連文献および緩消法公式サイトの情報